第三回電王戦は開催されないかも

現代ビジネスの「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実【後編】 一手も悪手を指さなかった三浦八段は、なぜ敗れたのか」を読んだ。今まで読んだ中で一番深く取材されており、洞察ももっとも突っ込んだものとなっており、正直衝撃だった。

僕は電王戦の始まる前に、以下のように書いた。

結果を率直に申し上げよう。GPS VS 三浦八段の期待勝率はGPS側から見て86%~91%である。逆に言うと三浦八段の勝てる確率は10%程度しかないということだ。しかもこれはGPS fishの推定レーティングである。本番マシンがこれよりどのくらい強いのかわからないが、勝ち目は実はほとんどないんじゃないだろうか。計算していて恐ろしくなった。(GPSの推定レーティングとプロ棋士の勝ち目 – Tsurezure Pentatonic

対して三浦八段は以下のように語っている。

それにしても、強いだろうとは予想していましたが、まさかこれほど強いとは思っていませんでした。戦う前に私は、この勝負には未知数の不安要素が4つあると見ていました。

 1つめは、対局の前にもお話ししたように有望な若手が18連敗したGPSの強さとは、基本的にどれほどのものなのかということ。しかも、それは1年前のバージョンです。

 2つめは、GPSがその後、どれだけ進歩しているのかということ。最新バージョンも提供されていて、強くなったとは思いましたが、どれほどの進歩かは把握しきれていませんでした。

 3つめは、670台をつなげることでどれだけ強くなるのかということ。

 そして4つめは、この勝負への開発陣の意気込みがどれほどのものかということでした。

 もし、これらの要素がすべて自分にとって最悪の予想どおりになったときは、私の勝算は5%だろうと思っていました。でもまさか、それはないだろうと。

 逆に、もしすべてが杞憂であれば、50%はあると思いました。自分の勝算は、そのくらいの幅だと考えていました。

 そしていま、冷静になって振り返ってみると、4つの不安はすべて当たっていました。つまり、私の勝算は5%しかなかったんです。

 でも、もしかしたら最悪の予想すら超えていた可能性もあります。何しろ悪手を指していないので、底が見えないんです。

 あれでさえ、どのくらいの力を出しているのか。まだどのくらいの力があるのか。想像がつかないというのが正直なところです(「人間対コンピュータ将棋」頂上決戦の真実【後編】 一手も悪手を指さなかった三浦八段は、なぜ敗れたのか文/山岸浩史

僕は、いろんな糸のような手がかりを手繰り集めて思い切った極論を書いたつもりだったが、三浦八段もまったく同じ感覚を持っていた。むしろ僕よりももっと悲観的だった可能性もある。

その絶望のなか一人で戦っていたとしたらその胸中たるや察するに余りある。

僕はこの記事を読んでいて、ひょっとしたら第三回電王戦は来年は開催されないんじゃないかと思い始めてきた。今の将棋界でトップレベルの三浦八段がこの感覚を持っているということは、もうコンピュータが人間を超えたのは自明ではないかと思う。その状態で、コンピュータと棋士がタイマンを張ったとき、どうもバランスがとれていない。棋士側の負担が大きすぎるのだ。

団体戦という観点はさておき、1局1局に関しては棋士はたった一人で立ち向かうことになるが、勝ち目のない負け将棋でもがいているところを中継で全世界にさらけ出され、負けた後の記者会見では容赦なくシャッターが切られ、さらに立て続けにどのくらい対策をしたのか、ちゃんと勉強してきたのか、とせき立てられ、ネットでは人間の面子を保てなかったと誹謗中傷の嵐である。

米長さんのような引退した棋士であればダメージもそんなに大きくないだろうが、若手の棋士にとってはトラウマにならないまでも今後の棋士人生に悪い影響を与えてしまう可能性も否定できない。(よい影響を与える可能性もあるだろうが)

僕は第3回電王戦があるとすれば、その可能性は一つしかないと思っている。カスパロフ VS DeepBlueの再現である。チャンピオンを出す必要がある、ということだ。チャンピオンかコンピュータか、もうはっきりさせてほしい。人智を超越してしまったコンピュータに人間が負けるなら負けるで仕方ないが、けじめをつけてもらわないと、どうもしっくりこない。要するに明確な区切りがほしいのだ。

僕には、チャンピオン、つまり、竜王タイトル保持者が最強将棋ソフトとタイマンで戦うという電王戦しか考えられない。現在の状態でいえば、そう、渡辺明 VS Bonanzaである。タイマンだから当然電力調整とかのハンデもなしである。お互い全力のガチ勝負。絶対みたい。みんなもそう思うだろう。

渡辺-ボナ、ぜひ見たい対局ではあるが、残念ながらこの勝負の実現性も薄い気がする。この間ニコ生でやっていたponanzaの将棋倶楽部24対局生中継の特別放送で、渡辺明、Bonanza開発者の保木さんが談笑するシーンが見られたが、彼らの関係は敵というわけではなく、遠い昔の好敵手、もっといえば小学校の同級生同士で同窓会をやっているような感じがした。僕には彼らが火花を散らして戦う姿が想像できない。

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プロ棋士とコンピュータ将棋開発者、ドワンゴがどのような判断をするか今のところわからないが、第3回電王戦が開かれるためには、3者ともにメリットがないとだめだ。現在の状況としては、ドワンゴ、コンピュータ将棋協会には明確なメリットがあるだろう。プロ棋士によっては出たいという人がいるかもしれないが、将棋連盟にそこまでの懐の深さがあるだろうか? 谷川体制になった今、米長時代よりも保守に舵が切られている、と思うのは僕だけだろうか?谷川さんに将棋界の先陣にたって道を切り開いていこうという心意気というか思い切りというか、そういった気概がどうも見えない。自ら背水の陣に立たなければ、プロ棋士たちはついてこない。

ということで、第3回電王戦は谷川体制が崩れないと開かれないんじゃないか、と思ってみるテスト。

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