プロ棋士は「AIに奪われる職業 No.1」か?

僕の意見を書いておきます。

論点としては、コンピュータより弱いプロ棋士の存在価値を疑っているということだと思うんだけど、僕はまだまだ存在価値は残っていると考える。

理由は2つ。一つは解説者としての役割だ。コンピュータ将棋がもたらした一つの大きな変革として「評価値」の誕生があげられる。近年はインターネットを通じて各種棋戦の生中継が行われることが多くなったが、この評価値が生まれたことによって、将棋のドラマチック性が大きく増して、より魅力的になったと感じる。

評価値のなかった時代は、解説者の漠然とした優劣判断だけが一般視聴者の将棋観戦における拠り所だったわけだが、現在の局面を定量的に評価できる評価値が画面上に表示されるようになってくると、一般視聴者は評価値の上下によりつぶさに優劣を判断できるようになった。評価値の急転直下により、大逆転なんかが起ころうものなら、インターネット中継のコメントには悲鳴があふれかえる。

評価値は将棋をドラマチックにしたと申し上げたが、評価値だけあればよいというものでもない。評価値によって生まれた一喜一憂を視聴者とともに共有・共感してくれる解説者が必要だ。その解説者は、将棋素人では当然だめで、コンピュータの予想手や評価の判断基準を低級者でもわかるようにわかり易く解説できなくてはならない。この役割の担い手としてはプロ棋士が最適だろう。

私は熟練のプロ棋士がコンピュータの予想手を見て、これは人間には指せないねぇー、とか、なんとそんな手がありますか!というように驚嘆する場面をみると一気にテンションがあがる。一生懸命頭を捻って考慮している手番の棋士の頭のなかにその手が見えているのか、私は想像する。もしコンピュータの最善手を指すようなら拍手が起こるし、とんでもない悪手を指してしまえば悲鳴の嵐だ。どちらにしてもプロ棋士が解説者として存在していてくれるからこそ、視聴者はリアルタイムで感動を共感できる。

プロ棋士のもう一つの存在価値。それは、タレント性だ。これもインターネットによる将棋放送充実に起因しているが、プロ棋士の指す将棋の内容だけではなく、人柄やキャラクターが際立つようになってきている。これが将棋観戦をさらに面白くしていると感じる。昔は棋士が何のお菓子を食べるかなんて興味がなかったし、昼食に何を選択するかなんてどっちでも良かった。仲のいい棋士同士からでてくる何気ないエピソードや、生中継中の雑談、ネタや特技の披露、師弟関係にある棋士の会話のぎこちなさ等々、将棋の内容以外のコンテンツでも十分に楽しい。

最近ではフットサルや、人狼ゲームなど、将棋とは全然関係ないコンテンツにもプロ棋士が「タレント」として参加するようになっってきた。若くて美人の女流棋士の中には、CMや雑誌で取り上げられている人もいる。プロ棋士がタレント性を持った今、棋士という職業はしばらくは安泰といってもよいだろう。

もちろん、無名の若手、キャラクターが確立されていない影の薄い棋士にとっては、風通しが悪いところもあるだろう。彼らがAIに職を奪われないようにするためにも、将棋連盟は、将棋人口の拡大、特にグローバル展開と女性ファンの拡充にもっともっと力をいれてほしい。1ファンとしてお願い申しあげたい。

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