ルーシー・ブラックマンと謎のWebサイト

黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実  読了。ドキュメンタリーの最高傑作と言えるだろう。訳者の功績も大きいだろうが、論理的でわかりやすくしかも、物語的であり、登場人物自身ですら気づいていないような深層心理、他人との関係、せめぎあい、憎悪が伝わってくる。もはや、ルーシー事件の範疇を大きく超えた普遍性を持って、人の世の複雑さ、もっというと自分自身の存在の曖昧さ・脆さを代弁してくれているかのようである。

本の発行から4年、事件からすでに20年近く経とうとしているが、どうしても気になることがあり、自分なりの調査の結果を書いておく。

この本の中にも触れられているが、「ルーシー事件の真実」と題打った謎のWebサイト(http://lucies-case.to.cx/index.html)が存在する。「2006年に開設」とTopページに書かれたこのサイトは、英語と日本語のコンテンツが存在しており、サイトの内容は裁判の記録及び証拠物が中心になっている。「黒い迷宮」によると、大部分が「織原側の主張」とのことである。

もう一つ謎なのが、その翌年に発刊されたドキュメンタリー ルーシー事件の真実―近年この事件ほど事実と報道が違う事件はないという本だ。この本は、重さ1キロ近く、厚さ4センチ、全796ページに及ぶ「織原城二研究のバイブル」となる本であり、「本事件で検察官はなぜ暴走してしまったのか?明らかにされた検察官の証拠隠滅・公文書偽造。 」という説明文がついている。

本の編著者は、「真実究明班」となっているが、実は先述のWebサイトの最下部のコピーライト欄にも同じ名前が記載されている。これは一体どういう組織なんだろうか?

同書の冒頭には「真実究明班は、ジャーナリスト、法科大学職員、元検事を含む法曹界会員などで構成されている」とかかれているとのことだが、後に費用未払いを理由に、織原城二と彼の弁護士である辻嶋彰を相手取り民事訴訟を起こした飛鳥新社によると、「被告らは、上記キャンペーン活動を中立性ある活動であるかのように装うために、同キャンペーンの担い手が第三者からなる特定の団体であるかのように装い・・・」「・・・『真実究明班』はもとより法人格を有する法人ではなく、権利能力なき社団に程度の遮社団性もなく、その実態は、被告ら個人に過ぎない」というのが実情のようだ。

「黒い迷宮」の脚注には、以下のようにある

飛鳥新社の編集者・奥原秀敏によると、複数の人間から矛盾する支持が寄せられ、作業に混乱が生じることがあったという。指示を出したのは全員、織原の弁護士だった(荒井清壽、辻嶋彰、塩谷安男、槙桂)。
「被告らからの指示は、荒井弁護士、槙桂弁護士、あるいは塩谷弁護士から編集者や原告(飛鳥新社)に伝えられたが、弁護士によって指示の内容が変わるなど、原告が対応に困惑することが多くあった」と訴状は続く。「このような事態と理由は、同弁護士らが原稿の内容等について逐一被告・織原に接見するなどして確認を取り、その際の被告・織原の言い分がころころ変わったためと推測される」
結果として制作に遅れと混乱が生じたと飛鳥新社は訴えた。さらに校了後、内容に誤りがあると槙桂からクレームが寄せられた。出版社は正誤表を挿入して対応することを提案し、荒井がそれを了承。しかしその後、塩谷から印刷を中止するよう指示があったという。そのような経緯があり、2007年4月の東京地方裁判所での判決公判直前まで販売がずれ込むことになった。また、英語版の出版は中止された。すでに大部分の翻訳が完了していたにもかかわらず、翻訳費用が支払われることはなかった。

謎のWebサイトを技術的に検証してみたい。「黒い迷宮」によると、「このような公文書を裁判所の許可なく発表するのは違法である・・(中略)警視庁は立件を検討。しかしサイト制作者は一枚上手だった。ウェブサイトのドメインはオーストラリア領クリスマス島を示す”.cx”となっていたのだ。結局、操作が行われることはなかった」そうである。

言わずもがなであるが、Webサイトの運営には多少なりともコストや設備が必要である。ドメインを維持するのにもコストがかかる。誰が管理して、誰がコストを払っているのか。

whoisを調べてみよう。以下のように情報が登録されている。

Whois Record for To.cx

Registrant MEDIAWARS COMPANY LIMITED
Registrant Country JP
Registrar CoCCA Registry Services (NZ) Limited | Public Registrar
IANA ID: —
URL: https://secure.coccaregistry.net
Whois Server: —

(p)
Registrar Status ok
Dates 4,857 days old
Created on 2005-10-20
Expires on 2019-10-20
Updated on 2018-10-15

Name Servers NS01.KIX.AD.JP (has 2,207 domains)
NS02.KIX.AD.JP (has 2,207 domains)

Tech Contact —

Mediawarsを検索すると、以下のサイトが簡単に見つかった。
https://www.mediawars.ne.jp/

この会社は、ホームページから分かる通り、ホスティングを行っている会社である。この会社が、2005年10月にto.cxドメインを登録してからずっと保持してきている。サブドメインも当然同社の管理下にある。

ん??

警視庁は諦めたって言っているけど、意外に日本のホスティング会社がサーバー管理してるんじゃ??

もう一つの手がかりはIPアドレスだ。

lucies-case.to.cxのIPアドレスは、pingすれば簡単にわかる。

$ ping lucies-case.to.cx
PING lucies-case.to.cx (210.233.74.166): 56 data bytes
64 bytes from 210.233.74.166: icmp_seq=0 ttl=54 time=132.760 ms
64 bytes from 210.233.74.166: icmp_seq=1 ttl=54 time=130.351 ms
64 bytes from 210.233.74.166: icmp_seq=2 ttl=54 time=204.608 ms

iplookupの結果は以下の通り。

IP Details for 210.233.74.166
Details for 210.233.74.166
IP: 210.233.74.166
Decimal: 3538504358
Hostname: sss004.kix.ad.jp
ASN: 9353
ISP: MEDIAWARS co.,ltd.
Organization: MEDIAWARS co.,ltd.
Services: None detected
Type: Broadband
Assignment: Static IP
Blacklist:
Continent: Asia
Country: Japan jp flag
Latitude: 35.69 (35° 41′ 24.00″ N)
Longitude: 139.69 (139° 41′ 24.00″ E)

これもMediawarsという同じ会社の管理下である。国もJapanと書いているが、念の為、緯度と経度を調べておこう。

Google Mapを調べると指定された緯度経度は新宿中央公園の真上(https://goo.gl/maps/2QJ6he4JX852)を指している。新宿区ということであろう。これはMediawarsの所在地と一致する。

「ルーシー事件の真実」はクリスマス島なんかにない。目と鼻の先にれっきと存在する。

個人の調査だとこのくらいしかできないが、今もホスティング契約が生きていて、料金が支払われているはずである。少なくとも共用サーバープランのECO-10 の契約はあるはずだ。これは、月1800円ぐらいである。果たして、契約者は誰なのか、誰が料金を払っているのか?、目的は?、そしていつまでこのサイトが維持されるのか、興味は尽きない。

 

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